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ウェビナーレポート|近藤 拓人さん「運動療法としてのピラティス」

セミナー 活動報告
ウェビナーレポート|近藤 拓人さん「運動療法としてのピラティス」

今回は、先日開催した無料ウェビナーの内容の一部をご紹介いたします。
本講座では、身体の痛みや不調を取り除き、日常生活や競技パフォーマンスを向上するためのピラティス指導についてお話しいただきました。
機能解剖学、機能神経科学、感覚運動科学などを統合したアプローチにご興味がある方、またピラティスをスキルセットに加えたい運動指導者・治療家などの多くの方々にご参加いただきました。

■テーマ:運動療法としてのピラティス

■開催日:2025年1月12日

■講師:近藤 拓人 (AZCARE ACADEMY 代表 / NEXPORT 代表)

1.ピラティスが担う感覚運動科学での役割

感覚運動科学は、慢性的な不調の緩和から根本的な改善からパフォーマンス向上までの以下の5つのブロックで構成されています。
その中で、ピラティスは「Corrective(是正・修正)」において非常に重要な役割を果たします。

Corrective (是正・修正)

このフェーズの目的は、身体の動きや使い方に問題がある部分を見直し、よりスムーズで効率的な動作へと導くことです。
ピラティスを取り入れることで、脊椎の柔軟性や安定性を改善し、身体全体のバランスを整えることを目指します。
ピラティスの強みは、身体の感覚を丁寧に引き出しながら、動きの問題を根本から解消することができる点です。
このアプローチにより、次のステップである筋力強化や運動制御をより効果的に行うことができます。

ピラティスをCorrectiveに活用する目的
・筋肉のバランス調整(働きすぎの筋肉を抑制、使われていない筋肉を活性化)
・可動性(Mobility)と安定性(Stability)の向上
・感覚の統合(Sensory Integration)と動作パターンの修正

2.ピラティスエクササイズについて

ピラティスを運動療法として活用する際には、マットエクササイズマシンエクササイズ、そして徒手療法を組み合わせることが効果的です。
それぞれに独自の良さがあるため、それらを理解し、クライアントの状態や目標に合わせて使い分けることが重要です。

ピラティスで重要なプログレッションとリグレッション

ピラティスエクササイズでは、クライアントの能力や状態に応じてエクササイズの難易度を調整する「プログレッション(進行)」と「リグレッション(後退)」が重要な役割を果たします。
このうち、特にリグレッションは高度な技術を要し、専門知識を持つ指導者でなければ適切に対応することが難しいとされています。

プログレッションとは?

プログレッションは、クライアントの能力が向上するにつれてエクササイズの難易度を徐々に高めていくことです。
例えば、10kgのダンベルでトレーニングできた場合、11kg、12kgと重量を増やしていくのが典型的なプログレッションの例です。

リグレッションの難しさ

一方で、リグレッションは単純に負荷を下げるだけではトレーニングの効果自体がなくなってしまう恐れがあるため、クライアントの課題や能力を正確に見極め、「なぜできないのか」を掘り下げる必要があります。 例えばマットエクササイズができない場合、

・筋力不足
・過剰な緊張
・特定の筋肉(例:後部連鎖筋)の過度な活性

など理由をしっかりと見つけて、改善するための種目を選ばないといけないのがリグレッションの難しさです。

3.エクササイズの順序

ピラティスを始める際は、いきなりマシンエクササイズを行うのではなく「マットエクササイズから取り組むことが理想的」です。
理由は以下の3つです。

1.自分の身体をコントロールする力を育てる
マットエクササイズでは、道具に頼らずに身体を動かす必要があります。
この「自動運動」を通じて、クライアントが自身の身体をどのようにコントロールできるかを知っておく必要があります。

2.正確な評価が可能
マットの動きを見ることで、筋力や柔軟性、バランス感覚、動作の質といったクライアントの能力を把握しやすくなります。
これにより、その人に適したエクササイズを効果的に処方することができます。

3.マシンの導入タイミングを見極める
最初からマシンを使用すると、補助が本当に必要だったかどうかの判断が難しくなることがあります。順序を守り、マットエクササイズで基礎を確認したうえでマシンを導入することで、エクササイズの効果を最大限に引き出すことができます。

また、クライアントの緊張具合や動かしにくい関節があるか、脊髄の方向、屈曲・進展・側屈・回旋どこが苦手なのかを見つけることも必要です。
問題を発見し、どの補助がクライアントに必要なのかを判断しなければなりません。

4.ピラティスマシンの特徴とメリット

リフォーマー

リフォーマーは、広い支持基底面により身体を安定させ、仰向けで安全にエクササイズを行えます。
これにより、脳が危険を感じることなく適切な緊張を保つことができます。
また、リフォーマーでは多様な動きと広い可動域を選択でき、脳に多くの情報を提供するため、効果的な動作学習が促進されます。
これにより、緊張を和らげつつ、早期に効果を実感しやすくなります。
一方、マットエクササイズも仰向けから始めることが多いですが、選べる動きの種類が限られており、動作のバリエーションが少ないためリフォーマーを使うこと推奨します。

タワー

タワーは機能的な可動域を広げるのに最適なマシンです。
関節包を伸長させることで脳への信号が増え、関節の位置認識や制御能力が向上します。
また、自重以上の動きが可能なため、筋機能が高くない方でも安全に大きな動作を行えます。
リフォーマーで緊張を解消した後、タワーで可動域を広げることで、効果的な運動療法が可能になります。

チェア

チェアは、プッシュ機能の強化に優れたマシンです。
プルに関わる背面の筋群は過緊張しやすく、プッシュに関わる前面の筋群は抑制されてしまいがちです。
そのため、初期段階ではチェアを使ってプッシュ動作を強化することが重要です。
チェアは、動作中にしっかり押せているかを確認しやすく、改善を実感しやすいことも魅力のひとつです。
また、プッシュ系の種目が豊富で、背面の緊張緩和や前面の筋群強化に効果的です。

5.まとめ

ピラティスをCorrectiveに取り入れる時には、まずはマットエクササイズでクライアントの身体の評価を行い、そのうえでリフォーマーで緊張を抑え、タワーで機能的な可動域を広げ、チェアでプッシュ機能を鍛えることで、身体のバランスを大きく改善することが可能です。
この状態でもう一度マットに戻ることが重要です。
マットエクササイズを再び行うことで、これまでできなかった動作がスムーズにできるようになっているかを確認します。
変化を実感することで、身体のコントロール力が向上していることを理解しやすくなります。
その後は、バレルやスタンディングエクササイズへと進み、自動運動で自身の身体をコントロールする力を高めるために、より高度な動きへプログレッションしていきます。

今回は運動療法としてのピラティスをテーマに、身体の痛みや不調を取り除き、日常生活や競技パフォームンスを向上するためのピラティス指導について詳しく解説いただきました。

■ウェビナーの内容について、より深く学びたい方は以下もご検討ください
>>オンラインサロン PLAZはこちら
https://plaz.jp/

>>Pilates Synthesis (オンライン学習+現地講習)はこちら
https://academy.azcare.jp/

また、近藤さんには3月9日開催の「トレーニングコンセプトに基づくジム設備の選定」や4月13日開催の「感覚運動科学の基礎」にもご登壇いただきます。
ご興味のある方は、ぜひ詳細をご確認のうえお申し込みください。

■今後のウェビナー情報

2月22日(土) 20:00-21:00
テーマ:Contextual Strength Training
講師:九鬼 靖太(大阪経済大学 人間科学部 准教授)
>>お申し込みはこちら
https://www.performbetter.jp/products/s0092

3月9日(日) 20:00-21:00
テーマ:トレーニングコンセプトに基づくジム設備の選定
講師:近藤 拓人(AZCARE代表,NEXPORT代表)
>>お申し込みはこちら
https://www.performbetter.jp/products/s0094

4月13日(日) 20:00-21:00
テーマ:感覚運動科学の基礎
講師:近藤 拓人(AZCARE代表,NEXPORT代表)
>>お申し込みはこちら
https://www.performbetter.jp/products/s0093

*本ウェビナーは12/15に開催したものと同じ内容になります。

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