*本コラムは旧オンラインショップで掲載された内容の再掲になります。
パフォームベタージャパンテクニカルディレクターの阿部勝彦がHYDROVESTを活用することで期待できるトレーニング効果と従来のトレーニングにプラスアルファを与えるアプローチをご紹介します。
HYDROVEST開発の背景
Frans Bosch との関係
HYDROVESTはオランダを拠点とするUltimateinstabilityが開発した商品です。Ultimateinstabilityの創設者 Paul Vennerとは数年前にドイツで行われた世界最大のフィットネスの展示会FIBOで出会い、HYDROVESTをはじめとするUltimateinstabilityの商品をいくつかご紹介いただきました。
商品は著名なトレーニングコーチのFrans Boschの考えに沿って開発されたものばかりで、ちょうどFrans Boschの考え方を学び始めていた私にはとても興味深いものでした。
従来のトレーニングとの違い
Frans Boschは従来のトレーニングの考え方に対して、新たな視点でプログラムを構築していましたので、以下の通り簡単にポイントをまとめます。
・動きとトレーニングには複雑さが必要である
・テクニックの要点を明確にする
・適応したアスリートではなく、適応可能なアスリートを作り出す
・ストレングストレーニングはストレングスのためにあるわけではない
・計画を多めに、コーチングは少なめに
・特異性でなく、トレーニングの転移を考慮する
・完璧ではなく、安定性を目指す
私もアメリカのトレーニング施設で働いていた経験から、今までのアプローチがシステマチックなものを中心に行っていた傾向があります。システマチックなプログラムは指導者も選手も理解しやすく、現場で利用しやすい反面、全ての状況に対応できないこともあるのが事実です。
Frans Boschは従来のストレングストレーニングやムーブメントトレーニングを再考し、より選手が置かれた状況からアプローチを構築していると感じました。
HYDROVESTの活用法
”動きとトレーニングには複雑さが必要である”の考え方をスプリントテクニックのアプローチに例えると、従来であればスプリントの動作パターンのアプローチ(ウォールドリル、ムーブメントスキル)とストレングストレーニングを別で実施すると思います。
しかしながらクローズスキルのスプリント(例えば陸上競技100m)選手では従来のアプローチでもパフォーマンスの向上は見られるかもしれませんが、オープンスキルのスプリント(例えばサッカーやラグビー選手)では不確定な要素(急激な方向転換、相手からの接触)に対して対応しなくてはならず、従来の方法だけではニーズに対応できない可能性が高くなります。
「スプリントの向上」も選手によって目的が異なるため、HYDROVESTを活用して、不確定な要素に対して体を安定させスプリント能力を養うことも重要になってきます。
そして”完璧ではなく、安定性を目指す”の考え方にもつながるのですが、共収縮(主導筋と拮抗筋の共同収縮)を動きの中で起こすことが動作の安定には必要で共収縮をおこすためのにFrans Boschは以下の三つのPに対して焦点を置いています。
Pretension(予備緊張)
Perturbation (混乱)
Time Pressure(時間的制約)
この三つうち上2つのP(PretensionとPerturbation)はHYDROVESTを利用することによって解決できるのではないかと考えます。
HYDROVESTのように不規則な水の動きを負荷の場合、予備緊張(Pretension)がないと動作を安定させるのが難しくなります。また水の動きは混乱(Perturbation)を導くことも可能になります。
私は実際にランニング動作の改善でどうしても体幹の安定性が落ちてしまう選手の指導にHYDROVESTを活用しています。
少ないコーチングで体幹の予備緊張を促し、競技中にある混乱(相手からのランニング中の押し合い等)に対して対応する能力を身に付けさせるためです。
Frans Boschの考え方は今までのトレーニングのアプローチを見直す機会になり、今後のアプローチを構築するにあたり参考になりました。また改めてご紹介します。
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