柱を持つことが、迷子にならない唯一の方法。内野健太さんが語る「学びを現場で生かすための構造」
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パフォームベタージャパンが普段お付き合いしているトレーナーや関係者をお招きして、施設のこと、専門知識、セミナー活動まで幅広くお話を伺うポッドキャスト。
今回はBest Performance Laboratory(BPL)テクニカルディレクターの内野健太さんをゲストにお招きしました。
「いろんなセミナーに行って学んできたのに、結局何をすればいいかわからない」——この悩みは、熱心に学ぶトレーナーほど一度はぶつかる壁です。パフォームベタージャパンがこのエピソードをお届けするのは、内野さんの言葉にその問いへの具体的な答えがあると感じたからです。知識をどこに置くか、どう整理するか、そしてチームにどう届けるか。創業から13年、BPLの現場と組織を支えてきた内野さんの思考には、現場で生きる構造がありました。
内野健太さんについて
内野さんはBest Performance Laboratoryの創業メンバーのひとりで、現在はテクニカルディレクターとしてトレーニングの質と方向性を担っています。専門学校卒業後にフィットネスクラブへ入社し、そこで代表の桂良太郎さんと出会ったのがキャリアの出発点です。桂さんがフィットネスクラブ時代にヘッドトレーナーを務めていたこと、その後独立してセミナーを開き始めたことで接点が深まり、施設オープン時に参画を決意しました。以来20年、桂さんとともにBPLを築いてきた中核メンバーです。ご自身もコンテストに出場し、2019年に優勝を果たすなど、指導者としてだけでなく実践者としても高いレベルで活動を続けています。
「調べる、聞く、そのままやる」——学びの土台
内野さんが若い頃から大切にしていた学びのスタンスは、シンプルなものでした。気になることは後回しにせず、その場で調べる。教わったことはまず自分の解釈を加えずにそのままやってみる。そこから出てきた新しい疑問をさらに調べていく。この繰り返しを徹底してきたと話します。
特に創業当初は桂さんのセッションを間近で見続けることが学びそのものでした。深夜に質問をぶつければ、求めている以上の答えが返ってくる環境で、「困らなかったかもしれない」と内野さんは笑いながら振り返ります。施設の中に常に手本となる存在がいたことで、知識と実践が循環する環境が自然にできていたといえます。
「柱を持つ」ことが、知識を迷子にしない
内野さんがセミナーや受講生からよく受ける相談があります。「いろいろ学んできたのに、結局何をすればいいかわからない」というものです。
この問いへの答えとして内野さんが語るのが、「柱を持つ」ことの重要性です。BPLではBPLパフォーマンストレーニングシステムというユニットの柱があり、リセット、ブリージング、モビリティ、モーターコントロールといった全11ユニットで構成されています。どこかで学んだ知識や技術は、すべてこの柱のどこかに紐付けることができます。
新しく学んだことが「単体で終わらずに引き出しの中に収納されていく」と内野さんは表現します。そうすることで、クライアントに必要なものをその引き出しから取り出してプログラムを組める。メソッドを「誰かに使おう」ではなく、柱の中から必要なものを引き出す。この発想の違いが、迷いのない指導につながると言います。
セミナーで新しいことを学んだ翌日に、よく知らないクライアントにもそのエクササイズをやりたがる——そういう傾向はどの施設でも起きやすいあるあるだと内野さんは言います。それを防ぐのが、学びを収納する先の柱があるかどうかだという考え方です。
流行を追うのではなく、抽象化して統合する
業界内ではトレーニングの流行が移り変わります。内野さんはドローインが全盛だった時代から呼吸・ブレーシングへの移行を実際に経験してきました。そういった変化の中で大切にしてきたのが、「まず触れてみて、抽象化する」というプロセスです。
具体的なメソッドを学んで、それをそのまま受け取るのではなく、「これは結局どういうことを言っているのか」と抽象化してみると、一見違う流派のアプローチでも「結局同じことを言っている」という共通項が見えてくることが多いと内野さんは言います。
この考え方はパフォームベタージャパンのサミット初期に桂さんが語った言葉と重なります。「違いを見つけるのではなく、まず共通項を見出すと話が整理できる」——BPLが長年大切にしてきた視点が、施設のカルチャーとして根付いていることがこの話からも伝わりました。
週次症例検討会——チームで目線を合わせる仕組み
テクニカルディレクターとして内野さんが取り組んでいることのひとつが、週に一回、トレーナーチーム全員で行う症例検討会です。
その週に起きた難しいケース、クライアントからの質問に対する回答で迷った場面、もっといいアプローチがあるのではないかという疑問——こういった内容をスタッフそれぞれが持ち寄り、全員で共有・ディスカッションします。座学でのやり取りで終わる週もあれば、実技ベースで確認する週もある。起きた問題や疑問に応じて内容が変わるのが特徴です。
「チームの目線を合わせる時間」と内野さんは表現します。若いスタッフが悩んでいれば先輩の経験を聞ける場であり、内野さん自身が現場で感じたことをチームに共有する場でもある。個人の気づきを組織の知識にする仕組みとして機能しています。
学びを組織に落とし込む方法
外部のセミナーで学んだ知識をチームに届ける方法についても、具体的な取り組みを教えてくれました。
まず、受講するときは「一言一句逃さず、完コピできるぐらいのつもりで」聞いてくるというスタンスを持ちます。次に、座学用のプレゼン動画を作成し、チームが事前学習できる環境をつくります。その上で現地での実技共有を行い、最終的にそれをどう施設の仕組みに落とし込むかを別途ミーティングで議論します。
この順序が大切だと内野さんは言います。事前に座学を済ませておくことで実技の共有がスムーズになり、チームからも質問が出やすくなる。「人に伝えるためにアウトプットすること自体が、情報の整理にもなる」という言葉は、受講する姿勢そのものにも当てはまります。
内野さんに限らず、ほっちさんや新井さんなどチームメンバーがセミナーに行く際も、同様のスタンスを持って受講し、戻ってきたら同じプロセスで共有するようにしているそうです。個人の学びをチームの財産にしていく仕組みが、施設全体のクオリティを底上げしています。
実践者であること——コンテスト出場という選択
BPLには「指導者たるもの、実践者であれ」という考えが根付いています。スタッフは入社から2〜3年のタイミングでコンテスト出場を経験することが多く、強制ではないながらも、その意義を説明すれば「やってみます」とみんながなっていくと内野さんは話します。
内野さん自身も2019年にボディビルのコンテストに出場し、ボ歴(ボディビル歴)1年目で優勝を果たしました。フルタイムで働きながらの挑戦でした。「理由をつけて中途半端にするより、徹底してやってみる。無理だったら、取り組み方が間違っていたのかもしれないという話」——内野さんはそう振り返ります。
この経験がクライアントとの現場で生きると内野さんは言います。食事制限でつらくなるクライアントに「気持ちはすごくよくわかります」と言える。そのうえで「私はこういうふうにして乗り越えました」と伝えられる。知識だけを押し付けるのではなく、経験に基づいて気持ちを交換できることが、人対人の指導においては大きな力になると話していました。
知識技術も大事だけれど、最終的には気合いと根性が必要だと内野さんははっきり言います。「それがゼロだと、知識技術に何をかけてもゼロのままになってしまう」——そしてご自身をそういう寄りの人間だと笑って付け加えていました。
おわりに——「トレーナーって素敵な仕事」を広めていきたい
20年のキャリアを経て、内野さんが今後に向けて語る思いはシンプルです。自分が学んだ知識や技術を通じて、目の前で困っている方を笑顔にできる。そういう経験をこの20年でたくさん積んできた。これをもっと多くの方に届けていきたいという気持ちは、最初からまったく変わっていないと言います。
そしてそれと同時に、そういう仕事ができるトレーナーという職業の素晴らしさを、同業者の方々にも広めていきたいと話していました。「次の20年は、よりそこにフォーカスしてやっていけたらいい」という言葉に、指導者であり組織人であり実践者であり続けてきた内野さんの20年分の重みを感じました。
トレーナーが自信を持って現場に立てること、その先にクライアントの変化があること——そのための知識・ツール・仲間との学びの場をつくり続けることが、私たちの役割だと考えています。
内野さんへの質問、または今後取り上げてほしいテーマがあれば、パフォームベタージャパンまでお気軽にお問い合わせください。
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