評価ができても結果が出ない、その正体は「共有」の問題。根城祐介さんが語る、チームで再現性をつくる方法
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パフォームベタージャパンが普段お付き合いしているトレーナーや関係者をお招きして、施設のこと、専門知識、セミナー活動まで幅広くお話を伺うポッドキャスト。
今回はActive-Aid Program代表であり、パーソナルジムAID広尾代表でもある根城祐介さんをゲストにお招きしました。
「評価はできるのに、なぜか結果につながらない」—多くのトレーナーが一度はぶつかるこの壁を、個人の経験不足やセンスの問題として片づけてしまいがちです。しかし今回お話を伺った根城祐介さんの考えは違いました。これは多くの場合、評価そのものの問題ではなく「共有」の問題だという指摘です。
パフォームベタージャパンがこの対話をお届けするのは、根城さんの言葉が、個人のセンスに依存しない「再現性のある指導」という考え方を、具体的な手順とともに示してくれているからです。
根城祐介さんについて
根城さんはアメリカでチームに所属してトレーナー活動を行った後、帰国後は日本でフリーランスとして活動。その後、ここ1〜2年で施設の代表という立場に立ち、組織のマネジメントにも携わるようになりました。個人としての活動と、チームを率いる立場の両方を経験してきたからこそ語れる視点を、今回はたっぷりお話しいただきました。
個人と組織、評価の質を分けるもの
根城さんが指摘するのは、個人で活動している場合と組織で動く場合とでは、求められる強さの種類が変わるという点です。個人で活動していると、良くも悪くも全てが自分自身に委ねられます。ある程度「センス」、つまり鋭い感覚に頼ってやっていけてしまう。しかし組織になると、そのセンスが前面に出すぎることがむしろ足を引っ張るケースが出てくるといいます。
組織で強さを発揮するのは、起きている現象を言語化できる人です。なぜこのアプローチをするのかを、上司や部下、同僚に対して言葉で説明できること。これは学んで身につけられるものだと根城さんは明言します。個人で活動していても、結局はクライアントに説明する場面が必ず生まれます。そこを感覚だけで片づけてしまうと、サービスを受けた直後は良くなるけれど、施設を出た瞬間に元のパターンに戻ってしまう、つまり再現性が低い状態になってしまう。お客様への説明を重ねることで、自ずと言語力は磨かれていくという考え方です。
一般のフィットネス愛好家を相手にする場合は、さらに難しさが増します。アスリートであれば「パフォーマンスを上げたい」「怪我を治したい」という目的が明確ですが、趣味としてゴルフやテニス、登山に取り組む一般の方の場合、その動機をすくい上げて言語化する必要があります。
根城さんが運営するパーソナルジムAID広尾には、ゴルフやテニスに取り組むいわゆるアマチュアアスリート層が多く通っており、トレーニングの内容がその人自身の趣味のパフォーマンス向上につながるよう意識的に設計しているといいます。体を鍛えるという言葉だけで片づけず、結果としてQOL(生活の質)が上がることを目指す、という姿勢です。
ズレの本質は「評価」ではなく「評価の解釈」
評価ができるのに結果がついてこない、という違和感を抱えるトレーナーは少なくないと根城さんは言います。その原因について、根城さんは明確な仮説を持っていました。問題は評価そのものではなく、「評価の解釈」にあるという考え方です。
同じ動きを見ても、何を問題として捉えるかはトレーナーによって違ってきます。評価という行為自体は揃っているのに、その解釈がズレることで結果が揃わなくなる。だからこそ、Active-Aid Programでは「原理原則」を重視することを伝えているといいます。「これはこうですよ」という単純化されたメソッドの伝え方をしてしまうと、見るべきポイントが過度に統一化され、イレギュラーなパターンへの対応力が失われてしまう。ゴルフスイングひとつとっても百人いれば百通り違うという前提に立ち、原理原則をチームの共通言語として持つことを大事にしているそうです。
ゴールの置き方についても明確な考え方がありました。森の中でコンパスがずれたら、永久にずれた方向に進み続けてしまう。だからこそ、まずゴール地点を一つに定める。痛みの改善が目的であれば、痛みがなぜ起きているのかを細分化して分析し、ゴールに向けたマイルストーンを立てていく、いわゆるトップダウンの考え方を重要視しているといいます。
予想・把握・評価・改善」という共通サイクル
根城さんが運営するActive-Aid Programでは、社員全員がレベル1・レベル2の研修プログラムを修了した状態で入社します。そこで重要視されているのが「予想・把握・評価・改善」というサイクルです。
予想とはいわゆる初見の段階です。クライアントを見て「肩が下がっているな」といった気づきを得る。次の把握は問診にあたります。見えている状態について、何か思い当たることがあるかを尋ね、そこから深掘りしていく。出てきた回答をもとに評価を行い、改善へとつなげる。画像診断を行っているわけではないからこそ、原因の確率を高めていくフェーズが必要になる、という根城さんの説明には、断定を避ける慎重さがにじんでいました。このサイクルをセッション中ずっと回し続ける感覚を、社員は研修プログラムを修了した時点で身につけているため、根城さんはこの部分に関する追加の社員教育を行っていないといいます。
このサイクルの中でも特に経験値が出やすいのが「予想」の部分だと考えられますが、Active-Aid Programではここに対する工夫があります。採用しているのはプロジェクトベースドラーニング(問題解決型学習法)と呼ばれる手法で、課題に対して受講生同士で意見交換をしながら解決策を探っていく形式です。キャリア30年のベテランから学生まで、経験のばらつきが大きい受講者が混在していても、この学習法によって一人で学ぶよりも速いスピードで気づきを得られる。自分一人では気づけなかったことも、他の受講生の発見から学べる仕組みになっているということでした。
評価とアプローチをセットにする、という現場のルール
実際の施設運営において重要視しているのが、「評価して終わり」にしないことです。評価がどのアプローチにつながるかをセットで成形しておく、という考え方です。例えば腰痛を抱えるクライアントで、初見で肋骨が開いている状態が見えた場合、腹横筋などの活動低下を仮説として、呼吸へのアプローチから入っていく——というように、評価の後に取るべき行動がある程度セットで見える状態にして、現場に送り出しているといいます。
スタッフの指導についても、独特な手法を採用しています。根城さん自身が控室にいて、セッションの様子を音声だけで聞いているそうです。視覚情報に偏りがちな人間の認知特性を踏まえ、聴覚情報、つまり顧客の声のトーンや話す速度、トレーナーの応答の様子から、セッションが盛り上がっているか、お客様が退屈していないかを判断する。そしてその場で得た気づきをフィードバックとして伝えています。何でも話してくれるようにと、社員との距離感を意識的に縮めているという姿勢も伺えました。
施設運営を始めたことで、Active-Aid Programの研修内容自体もアップデートされてきたといいます。現場で実際に起きる出来事、スタッフがつまずくポイント、パーソナリティの違いによる気になる観点の違い——こうした実地の知見が、研修プログラムに反映され、また研修で伝えた言葉がスタッフを通じて現場に還元される。臨床の現場とアカデミックな部分、この両輪が相互に影響し合っているという話でした。
サービス業としての本質、人材選びの基準
根城さんが特に強調していたのが、トレーナーという仕事が「究極のサービス業」であり、かつ「究極の矛盾」を抱えた業種だという視点です。お金を払ってきついことをしに来る、という構造自体が矛盾している。さらに美容院のように施術後すぐに結果が見える業種とは違い、トレーニングは日々の積み重ねの先にようやく結果が出るものです。
この矛盾を踏まえた上で、根城さんが人材に求めるのは、知識や技術以前に「本質を持っているか」という点でした。お客様からいただいているお給料であることを常に意識させ、そのために全身全霊で目の前のクライアントに向き合える人材を採用するようにしているといいます。研修プログラムが確立されているという自信があるからこそ、知識や技術は研修で身につけてもらえばいい、人間性の部分でこそ良い人材を採りたい、という考え方が根城さんの中では一貫していました。
一方で、上司として話しやすい雰囲気を保つことも重要視しています。統率のためのメソッドが恐怖心に頼ってしまうと、働く人が伸び伸びと能力を発揮できなくなる、というのが根城さんの考えです。礼儀や上下関係はしっかり保ちながらも、オンとオフを分けて、近い距離感で接するスタンスを意識しているといいます。
読者へのメッセージ——再現性のある仕組みをつくること
現場でズレが生じる原因は、根城さんの見立てでは大きく3つ、評価そのものの誤り、介入の優先順位のズレ、指導方法の誤りに限定できるといいます。そして実際に現場を見ている限り、指導方法のミスと優先順位のズレが多いという実感を持っているそうです。原因を限定的に捉えることで、何を改善すべきかが明確になる——この姿勢は、闇雲に「経験を積め」と言うのではなく、構造的に問題を切り分けていく根城さんらしい考え方が表れている部分だと感じます。
今後の展望として根城さんが語ったのは、「うまいトレーナーを増やす」のではなく「結果が出る仕組みを増やす」という方向性でした。個人のスキルに依存しない、再現性のある指導を広げていく施設を拡大していきたい。臨床の現場とアカデミックな部分、この二本の軸を一歩ずつ、地に足をつけて積み上げていくという姿勢です。
この「個人の経験だけに頼らず、業界全体で再現性のある知識を共有していく」という発想が業界のレベルを上げていくと感じました。根城さんが積み上げてきた評価とアプローチの仕組みは、フリーランスで活動するトレーナーにとっても、チームを率いる立場のトレーナーにとっても、自分の現場を見直すきっかけになるはずです。
根城さんへの質問、または今後取り上げてほしいテーマがあれば、パフォームベタージャパンまでお気軽にお問い合わせください。
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