日々新たなトレーニング理論が増えていく中で、インプットした内容を日常のクライアント指導にどう活かせばよいのか悩んでいるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本コラムでは、最新のトレーニング理論やそれを現場に活用するために必要な器具をご紹介します。ぜひ、日常の指導にお役立ていただけますと幸いです。
今回は Mike Boyle Strength & Conditioning(MBSC)の創設Michael BoyleがPERFORM BETTER本社のブランドサイトに寄稿した「Mike Boyle's "Ah-Ha" Moments」をご紹介します。
トップアスリートのトレーニング指導者としてはもちろん、民間のトレーニング施設としても成功を収めているMBSCの創業者としても活躍中のMike Boyleコラムをぜひ最後までご一読ください。
マイク・ボイルの「Ah-Ha(気づき)の瞬間」
私の親友であるアルウィン・コスグローブは、「Cosgrove’s Five Ah-Ha! Moments: The Education of a Misguided Trainer」という記事を書きました。
アルウィンは様々な面で私にインスピレーションを与えてくれます。
多くの場合、それは彼が二度がんを克服したという人生経験から来るものです。
しかし今回は、彼の文章そのものから大きな刺激を受けました。
以下は、リハビリ、トレーニング、栄養に関する私自身の「Ah-Ha(気づき)」の瞬間の数々です。
これまでの常識を覆されるかもしれません。
まず最初に、あなたがまだ聞いたことのない最も賢い人物を簡単に紹介します。
これまでビル・ハートマンがその称号を持っていたと言われていましたが、今や多くの人が彼の卓越性を知っています。
私が今回「世に知られていない天才」と推薦したいのは、理学療法士の Dr. Dan Dyrek です。
人間の体とリハビリに関して、彼ほど優れた専門家を私はこれまで知りません。
私は彼と彼のスタッフと月に一度会い、ブレインストーミングをする機会を楽しみにしています。
そして最近の多くの「Ah-Ha」は、まさにこのミーティングで生まれています。
また、この分野で最も賢い人たちは本を書いたりネットに投稿したりしているわけではない、ということも私たちは忘れるべきではありません。
多くの専門家は、ただクライアントの改善に全力を注んでいるのです。
■ Ah-Ha #1 – “腱炎”ではなく“腱症”であることが多い
多くの人が「自分は腱炎(tendonitis)だ」と思っていますが、実際には「腱症(tendonosis)」であるケースがほとんどです。
単なる言葉の違いでしょうか?
決してそんなことはありません。
慢性的な腱炎という状態は存在しないと言っていいでしょう。
もし痛みが慢性的に続いているなら、それはおそらく腱症です。
腱症では、腱は慢性的なストレスと適切でない治療への反応として構造的な変化を起こしています。
そしてこの状態は治療が変わらなければなりません。
氷や抗炎症薬は、もはや炎症反応が主体ではない腱症にはほとんど効果がありません。
実際、私の友人である優れた理学療法士の Dr. Donnie Strack は、抗炎症薬を使い続けることが腱を弱くし、治癒を遅らせる可能性があると指摘しています。
■ Ah-Ha #2 – ソフトティッシュケアは刺激である
慢性的な筋肉の問題や腱の問題に対するソフトティッシュの処置(いわゆる筋膜・軟部組織へのアプローチ)は、ただ単に揉みほぐすだけではありません。
それは、組織に刺激を与え、化学的な反応を引き起こすための処置なのです。
その刺激がやがて組織の回復プロセスを始めます。
そのため、ソフトティッシュのアプローチはしばしば痛みを伴い、翌日には筋トレをしたような感覚が残ることもあります。
Dr. Strackによれば、このような処置は線維芽細胞の形成を促進し、腱症に見られる未熟で無秩序なタイプ3コラーゲンを、より強く並列な成熟したタイプ1コラーゲンへと変えていきます。
■ Ah-Ha #2B – 名称は重要ではない
ソフトティッシュへのアプローチには様々な名前がありますが、名前そのものは重要ではありません。
理学療法士は「Soft Tissue Mobilization」と呼び、カイロプラクターは「Active Release Technique(ART)」という名称を用い、マッサージセラピストは「ディープティッシュワーク」と主に言う傾向があります。
重要なのは名前ではなく、手による圧力が組織に化学的な反応を引き起こすという事実なのです。
■ Ah-Ha #3 – 「ウォルフの法則(骨は負荷に応じて変化する)」
19世紀の解備学者ユリウス・ウォルフが提唱した「ウォルフの法則」は、骨は加わる負荷に応じて時間をかけて強くなったり弱くなったりするという理論です。
負荷が増えれば骨は耐えるためにリモデリングし、外側の皮質骨は厚くなります。
逆に負荷が減れば、骨は弱くなります。
この法則は筋肉や腱、軟骨にも共通して言えることであり、スポーツ選手の骨軟骨が一般の人より厚くなることも報告されています。
■ Ah-Ha #4 – “Locking”(ロックした長さ)の概念
Thomas Myers の『Anatomy Trains』で紹介されている概念では、長く伸ばされた筋肉は “Locked Long”、逆に短縮した筋肉は “Locked Short” という状態になると説明されています。
この考え方は、単に「短い側をストレッチし、弱い側を強化する」といったアプローチだけではうまくいかない理由を説明しています。
年齢を重ねたクライアントでは、骨や筋肉の構造的な変化が起こっており、フォームローラーやストレッチ、数種類のエクササイズだけでは戻らないケースもあります。
長年ストレスがかかった筋肉は、より多くのコラーゲンと少ない弾性を持つようになることもあります。
■ Ah-Ha #5 – 痛みを伴うエクササイズが有効な場合がある
私は長い間「痛みがあるならやめなさい」と言ってきましたし、痛みの有無は Yes/No で判断すべきだと思ってきました。
しかし、Dan Dyrek との研究を通じて、それが誤りであるケースがあると気づかされました。
腱症の再構築プロセスでは、ある程度の腱の痛みを伴うエクササイズが、組織のリモデリング反応を促す刺激として必要になることがあります。
ポイントは痛みの「質」です。
局所的で触れると痛みがあるが、腫れや動きの制限がなく、いわゆる DOMS(遅発性筋痛)のような反応で数日以内に治まる痛みであれば、適切な刺激と判断できます。
■ Ah-Ha #6 – 「弱い協働筋」を探す
私のことを知っている人なら誰でも、私がShirley Sahrmann の大ファンであることを知っていると思います。
私は自分の講義を通じて、彼女を「最も賢い人物」という存在から、この業界における“誰もが知る存在”に引き上げたいと思っています。
Shirley Sahrmann はこれまでに数え切れないほど素晴らしい言葉を残していますが、その中でも特に印象に残っているのが、次の言葉です。
「ケガをしている筋肉を見たら、必ず弱い協働筋を探しなさい。」
まさに、シンプルでありながら本質を突いた言葉です。
ハムストリングを痛めているなら、臀筋(グルート)が弱いのかもしれません。
大腿直筋を痛めているなら、腸腰筋が弱い可能性があります。
基本的な考え方はこうです。
ケガをしている筋肉は、単なる“結果”にすぎず、その背景には必ず根本的な弱点が存在している。
■ ボーナス Ah-Ha(栄養編)
とうもろこしは「野菜」ではなく、「穀類」であるという事実です。
味や見た目は野菜に見えるため誤解しがちですが、分類上は穀物であり、さらには高果糖コーンシロップのような誘導物は避けるべき不純物です。
Michael Boyleの寄稿は以上です。
PERFORM BETTER本社ではMichael Boyle以外にも多くの契約トレーナーがいますが、彼らの発信するトレーニングやリハビリ、リカバリーなどの情報がアメリカや世界のスポーツ、フィットネス、医療の現場に活かされています。
次回以降も契約トレーナーからの有益な情報をご紹介させていただきます。
コラムにはこれまでさまざまなテーマの記事をご紹介していますのでご興味のある方はぜひチェックしてみてください。
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