今回は、先日開催した無料ウェビナーの内容の一部をご紹介いたします。
今回のウェビナーでは、Active-Aid Program代表の根城祐介さんに関節アライメントを考慮した連動性について解説いただきました。
本レポートでは、 解説に加えて実践エクササイズの動画も豊富に掲載しております。
現場で役立つ内容が詰まっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
■テーマ:関節アライメントを考慮した連動性とパフォーマンスの向上 ~運動感覚を培うために~ プレウェビナー編
■開催日:2025年7月25日
■講師:根城 祐介 (Active-Aid Program 代表取締役)
感覚器 × 関節アライメント
ケガと感覚のズレの関係性
ケガの多くは関節位置のズレではなく、“感覚のズレ”が先に起きています。
関節の構造や運動連鎖を理論的に整理しても、アスリート自身が「正しい位置」や「力の出し方」を感じられていなければ、動作の制御には繋がりません。
この感覚をつかさどるのが、眼、耳、足底などの感覚器とそれを統合する神経系です。
特に頸部は視覚や前庭覚との接続が深く、「頸部のアライメント調整 = 上位感覚入力の最適化」につながる重要な介入ポイントです。
姿勢と足部:末端と中枢の関係性
足部の不安定さは、姿勢やパフォーマンスに大きな影響を及ぼします。
とくに、足部が地面からの情報を正確に感知できていない状態では、姿勢制御のための入力情報そのものが不安定となります。
これは、「中枢(体幹)」と「末端(足部)」が互いに影響し合うという原理に基づいています。
例えば、足がぐらついている状態で「体幹部を正しく使って」と指示しても、本体がその状態をインプットとして扱えていない場合、動作を精度高く制御することは困難です。
末端の不安定性は、中枢の適切な出力を妨げる要因となるのです。
「姿勢制御の出力エラーが中枢にあるとは限らず、足部という末端からの入力エラーが原因であるケースも多い」ため末端の感覚入力を整えることが重要です。
この観点から、足部アライメントを整えるトレーニングや、足部での重力認知を高める感覚入力へのアプローチが、パフォーマンス向上の第一歩になります。
分節動作力の向上
パフォーマンス向上に必要な要素として分節動作力、反力の伝達、脱力の3つを挙げられました。
今回のウェビナーでは分節動作力をピックアップし解説いただきました。
*パフォームベタージャパンサミットでは反力の伝達や脱力についても詳しく解説いただきます。
分節動作とは、ある関節を動かしているときにある関節を安定させられる能力です。
例えば、頭部回旋時に胸部の代償回旋が生まれないか→逆方向への動作(安定性)が確保できているかどうかの問題になります。
チェックすべき部位
これらの部位をOKCやCKCを使ってチェックしていきます。
今回は眼球vs頭部、胸部vs腰部からエクササイズをご紹介します。
エクササイズ紹介
眼球vs頭部
フォームローラーを使ったVORエクササイズ(仰臥位)
目的:
前庭動眼反射(VOR)の評価およびトレーニングを目的としたエクササイズで、頭部と眼球の動きを分離しながら制御する力を養います。
フォームローラーの上に仰向けになることで不安定性が生まれ、より感覚入力の精度が求められます。
ポイント:
・頭部を左右にリズミカルに動かしながら、眼球で正面のターゲットを追従(固定)する。
・動かすスピードや幅、時間を変えることで負荷を調整可能。
・頭部の可動と眼球固定が協調しているかをチェックすることで、テストとしても活用可能。
・動作中に目線がぶれたり、過度な緊張が出る場合は、神経系の協調に課題がある可能性を示します。
立位でのVORエクササイズ
目的:
立位という日常に近い環境で、眼球と頭部の分節動作をトレーニングします。
重力下での姿勢保持と視覚機能の協調を高め、バランスや反応速度の向上に寄与します。
ポイント:
・立位姿勢で頭部を左右に動かしながら、眼球は正面のターゲットを固定。
・仰臥位と異なり、姿勢制御や抗重力筋群の関与が強くなるため、より実践的なVORエクササイズとして位置付けられます。
・反復回数が増えると、姿勢の崩れや視線の逸れが出てくるため、感覚と運動の協調性のチェックにも有効です。
胸部vs腰部
胸椎ロールアップ(OKC:オープンキネティックチェーン)
目的:
腰椎や骨盤の位置を安定させたまま、胸椎単独の分節動作を引き出すエクササイズです。
胸部と腰部の動作を切り分ける能力を養うことで、不要な代償動作を抑制します。
ポイント:
・仰向けで骨盤をニュートラルに保ち、胸椎だけを意識してロールアップ。
・腹圧を抜かずに動作を行うことで、体幹部の固定と胸椎の可動性を同時にコントロールします。
・腰部の過剰な屈曲や頸部の代償動作が出ないように注意。
ニーリング+プレスFW
目的:
両膝立ち姿勢で胸部の伸展・分節動作を意識させながら、前方へのプレス動作を組み合わせた体幹部エクササイズです。
支持基底面を狭くすることで姿勢制御力を高めつつ、胸部・肩甲帯の安定性と可動性を向上させます。
ポイント:
・ニーリング姿勢で骨盤〜体幹を安定させた状態から、腕を前方へプレス。
・胸部の伸展や肩甲帯の安定性を意識しつつ、腰部の反り過ぎ(代償動作)を防ぐ。
・呼吸を止めずに動作すること、プレス時に肘が開きすぎないように注意。
ディスカッション&Q&A
参加者からの質問に対し、自身の現場実践をもとに具体的にお答えくださいました。
以下、一部抜粋してご紹介します。
Q1. 関節位置の認知と感覚器、重力の認知について、評価方法やアプローチ後のフィードバックの得方はありますか?
A:
評価では「本人が接地感覚を感じているかどうか」を主観的に確認することがポイントです。
アプローチ後に「足がついた感じがある」「ブレにくくなった」などのフィードバックがあれば、介入が適切に働いた可能性があります。
Q2. ミニバンドを使用したマーチングで、バンドの負荷は何を意識するために使っていますか?バンドなしでも可能ですか?
A:
バンドは意識させたい部位(股関節・膝・足部)に感覚を届けるための道具として使っています。
バンドなしでも動作は可能ですが、感覚入力を増やすという点では非常に有効です。
Q3. 機能的に見えても正しく効いていない原因は何が考えられますか?
A:
表面上の動作が綺麗でも、感覚器の問題や関節の位置認知エラーが残っていれば、正しい感覚入力が得られず、狙った部位に刺激が入りません。
結果的に、本人はできているつもりでも中身が伴っていない状態が起こります。
本ウェビナーは、感覚器や関節アライメントへの理解を深めると同時に、現場でのアプローチに即活かせる具体的な実践例を解説いただきました。
サミット本番ではさらに深い内容が展開される予定です。
サミットのご参加もぜひご検討ください。
株式会社パフォームベタージャパン