今回は、先日開催したActive-Aid Program 様との無料コラボウェビナー第六弾をご紹介いたします。
腰痛は多くの人が経験する身体の不調のひとつです。
今回のウェビナーでは、講師の根城祐介さんに伸展型腰痛に着目した評価とアプローチについて解説いただきました。
本レポートでは、 解説に加えて実践エクササイズの動画も豊富に掲載しております。
現場で役立つ内容が詰まっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
■テーマ:腰痛改善エクササイズ: コンディショニングからトレーニングにおけるミニバンド&スーパーバンド活用法
■開催日:2025年5月21日
■講師:根城 祐介 (Active-Aid Program代表取締役)
伸展型腰痛の評価と考え方
「立ちっぱなしで腰が張る」「座ると少し楽になる」 このような訴えは、背面の筋群の過活動(ハイパーアクティブ)に起因する伸展型腰痛の可能性があります。
評価の視点として以下の3点をポイントに挙げました。
・長時間の立位で張り感が強くなる
・座位や前屈後に一時的に軽減する
・運動後に腰部が張りやすい
これらの症状がある場合は、過活動・不動・低出力といった要因が複合的に関与している可能性が高く、それらに合わせたアプローチが求められます。
また、骨盤帯のランドマーク(上前腸骨棘と恥骨結合)を用いた評価も重要です。
「前傾」と「フォワードローテーション」を区別して観察することで、腰椎に加わる剪断ストレスの有無を見極める視点を解説いただきました。
ミニバンド&スーパーバンドを用いた運動介入
ミニバンドの活用
ミニバンドは短い距離で明確な抵抗を与えられるため、局所の筋の正しい収縮パターンを引き出すことや、代償動作の観察に適したツールです。
・骨盤や股関節の正しい動きを引き出すためのアプローチ
・仰臥位や側臥位での安定性向上
・小さな可動域での制御能力の強化 など
スーパーバンドの活用
スーパーバンドは広い可動域と多方向のベクトル負荷により、体幹部と四肢の連動を高めるトレーニングにも活用できます。
・ハーフニーリングでのチョップ動作
・ローテーション系の体幹安定性強化
・姿勢や呼吸の誘導にも有効
それぞれのツールの特性を活かすことで、不動・低出力・過活動といった状態に対する介入が可能になります。
エクササイズ紹介
伸展型腰痛への実践的なアプローチとして、以下の3つの戦略を軸にしたエクササイズをご紹介いただきました。
重力軸圧の軽減
重力方向への負荷を減らすことで、脊柱や体幹部への圧力を抑え、動作に必要な感覚入力を高めることが目的です。
スーパーバンド:四つ這い背中丸め呼吸
四つ這い姿勢でスーパーバンドを体幹に巻きつけ、背中を丸めた状態での呼吸を行います。
軸圧を逃しやすく、脊柱の圧力が軽減されることで、呼吸筋の誘導にも有効です。
スーパーバンド:3ヶ月ポジションプレス呼吸
仰向けで3ヶ月姿勢をとり、スーパーバンドにプレートを通して前方へプレスします。
呼吸と同時に安定性を高めつつ、身体にかかる垂直方向の負荷を軽減できます。
大腿部筋群/腹筋群の共同収縮
下肢と体幹前面の協調性を高めることで、骨盤の安定性を強化し、腰椎への過剰な負担を抑えることが狙いです。
スーパーバンド:3ヶ月ポジションプレス呼吸
呼吸にあわせてプレートをプレスすることで、大腿四頭筋や腹直筋の同時収縮が促され、骨盤帯の安定性が向上します。
スーパーバンド:共同収縮ローテーション
側臥位姿勢で下肢と体幹を同側方向に動かす動作を通して、ローテーション動作中の体幹部安定と下肢主動筋の協調が獲得できます。
抗重力筋とダイナミック動作
抗重力下での胸椎回旋や下肢安定を目的に、動作中の体幹コントロールを強化します。
スーパーバンド:HKチョップ(ハーフニーリングチョップ)
片膝立ち姿勢からの斜め方向へのプル動作です。
胸椎回旋を誘導しながら、腰椎の安定(ランバーロック)を図る構成で、抗重力下での動作精度向上を目指します。
その他(評価・代償の見極めポイントを含むエクササイズ)
【股関節】
ミニバンド:仰臥位マーチング
重力の影響が少ない仰臥位で行うことで、骨盤の過度な動きを抑えつつ、股関節の分離運動を促すエクササイズです。
*代償の見極めポイント:骨盤が左右に回旋・傾斜しすぎていないかを確認し、腰椎の不要な動きを抑える。
ミニバンド:仰臥位クラムシェル
股関節外旋筋の活性化を狙う基本的なエクササイズです。
*代償の見極めポイント:骨盤全体が後方回旋するような動きが入らないように注意する。
骨盤が床に対して垂直を保てているかをチェック。
【胸椎】
ミニバンド:SP上肩甲骨上方回旋
胸椎の伸展と肩甲骨の上方回旋を連動させる目的で実施します。
オーバーヘッドスポーツなどに特に有効なエクササイズです。
*代償の見極めポイント:リブフレア(肋骨が前方に開く)や、腰椎の過伸展によって胸椎伸展を補っていないかを確認。
【体幹部】
ミニバンド:座位マーチング
体幹の安定性を保ったまま下肢をコントロールするためのアプローチです。
*代償の見極めポイント:骨盤が片側へシフトしたり、上体が左右に揺れないように意識。
ミニバンド:立位マーチング
重力負荷が強まる立位での体幹・下肢協調エクササイズです。
*代償の見極めポイント:腰椎が過度に反ったり、片足立ちの際に骨盤が崩れていないかを観察。
本ウェビナーでは、評価の視点を踏まえた上で、ミニバンド・スーパーバンドを活用した実践的なアプローチをご紹介いただきました。
エクササイズをただ実施するのではなく、「なぜこの動きが必要か」「どのように評価するか」という視点を持つことで、再現性のある効果的な指導につながります。
本レポートが、皆さまの現場でのアセスメントやエクササイズ指導に少しでもお役立ていただければ幸いです。
株式会社パフォームベタージャパン