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Webinar Report|明日から使える!ツールを用いた制約主導アプローチの実例 ケトルベル編(桂 良太郎先生)

セミナー トレーニング
Webinar Report|明日から使える!ツールを用いた制約主導アプローチの実例 ケトルベル編(桂 良太郎先生)

今回は、先日開催したBest Performance Laboratory 様との無料コラボウェビナー第六弾の内容を前編後編の2回に分けてご紹介いたします。
トレーナー・セラピスト・医療従事者・学生など、幅広い層が参加した本ウェビナ ーでは、理論と実践の両面から深い学びを提供いただきました。

■テーマ:スポーツパフォーマンス向上と傷害予防のためのコンディショニング -ツールを用いた制約主導アプローチの実例 -

■開催日:2025年3月29日

■講師:桂 良太郎 (株式会社Best Performance Laboratory 代表取締役)

制約主導アプローチとは? ~理論的背景と実践的意義~

制約主導アプローチの理論的背景として、「非線形運動学習理論」「エコロジカルアプローチ」「運動制御理論」などをご紹介いただきました。
中でも注目されたのは、ロシアの運動科学者ニコライ・ベルンシュタインが提唱した「繰り返しのない繰り返し(Repetition without repetition)」という考え方です。
これは、“同じ結果を得るためには、毎回違う動作が必要である”というパラドックスのような概念で、従来の「理想的な動きを繰り返して習得する」というアプローチに一石を投じるものでした。
「熟練者ほど動作のばらつきが大きい」という事実を、プロ野球投手や熟練の鍛冶職人の動作解析例を用いて解説いただきました。
こうした背景を踏まえ、制約主導アプローチでは「環境」「生体(身体)」「タスク(課題)」という3つの制約が相互に作用することで、最適な動作が自然と導き出されるように設計しなければなりません。
その中でも「ツール=道具」はタスク制約の一つとして、動作を“導く”強力な仕掛けとなります。
「何を意識させるか」ではなく、「どのような状況に置くか」によって動作を引き出す。
こうした指導の発想転換が、現在のスポーツやリハビリ、フィットネス指導に求められています。

ケトルベルを活用したエクササイズ“正しい動作”と“エラー動作”の比較

正しい動作とよくあるエラー動作の理解を深めるため、実際の動作動画を用いながらクイズ形式で解説いただきました。

ターキッシュ・ゲットアップ(TGU)

TGUは、肩・体幹・股関節の連動を求められる、全身のコーディネーションを高めるエクササイズとして広く知られています。
しかし、一見シンプルに見える動作にも多くの“落とし穴”があり、誤ったフォームのまま続けてしまうと、パフォーマンス向上や傷害予防の効果を十分に得られません。

【正しい動作のポイント】

1.地面反力を活用して「押し返す」動作ができているか

2.体幹と四肢が“協調的”に連動しているか

3.各ポジション間のトランジションが滑らかかつ安定しているか

こうした要素が満たされていれば、同じ重量でもより“楽に・滑らかに”動作を遂行できるようになります。

【よく見られる動作エラーと原因】

1.下肢が浮き上がる→地面反力が使えていない/腹部・下肢の共同収縮が不十分

2.肘が曲がる・パッキングが崩れる→肩甲骨の安定が得られていない、上腕の筋出力に依存

3.動作中にバランスが崩れる→股関節伸展不足、支持脚の力がうまく使えていない

これらのエラーは、効率的に動作を遂行できず、過剰な努力を必要としている際の典型例です。
可能な限り少ない努力(Effortless)で、動作効率性(Movement Efficiency)を損なうことなく動作を遂行出来るかどうかが、エクササイズを処方する際の重要なチェックポイントになります。

ケトルベルスイング

ケトルベルスイングは、ヒップヒンジを中心とした力強い股関節の伸展と、肩のパッキングを同時に求める全身運動です。
パフォーマンス向上だけでなく、傷害予防にもつながる基本的なエクササイズですが、よくある“なんとなくやってしまう”スイングでは、本来の効果が得られないだけでなく、身体に負担をかけてしまうこともあります。
4種類のスイングを並べて比較しながら、正しい動作のポイントとエラー動作の傾向を解説いただきました。

【正しい動作のポイント】

1.股関節でケトルベルを弾く(ヒップヒンジ)。

2.ケトルベルが体の前に出た後に、肩甲帯を安定させて“瞬間的に⽌めるようなブレーキˮをかける。

3.下半身→体幹→上半身の力の伝達が滑らかかつタイミングが整っている

これらを満たすことで、動作の効率性が高まり、より大きな負荷にも耐えうるフォームが獲得されます。

【よく見られる動作エラーと原因】

1.ケトルベルに“引っ張られている”動作 → 股関節の爆発的なヒンジ動作が弱く、ケトルベルの運動エネルギーに動きを委ねてしまっている

2.パッキング不足によるブレーキ力の欠如 → 肩甲骨・体幹・股関節の“共同収縮”が取れておらず、動作の終点でケトルベルを制御できない

3.タイミングのズレ(上半身と下半身が同時に動く) → 本来は“股関節→体幹→上肢”の順で力が伝わるべきだが、動作の連動性が失われている

今回はコラボウェビナー第六弾の内容から制約主導アプローチの基礎から実際にツール(ケトルベル)を用いた実例をご紹介しました。
次回はメディシンボール編としてソフトトスメディシンボール、ソフトメッドメディシンボール、ジャムボールを活用した投動作やローテーション動作の制御に役立つ実践をご紹介します。
ツールごとの違いや目的に応じた使い分けも解説いただいていますので、ぜひ次回の配信もチェックいただけますと幸いです。

もっと詳しく知りたい方へ

■ウェビナーの内容についてより深く学びたい方

今回のセミナー内容に関してはBest Performance Academyの講座でも学ぶことができます。
世界で活躍するオリンピック選手やプロアスリートなど、数多くのトップアスリートを指導しているBest Performance Laboratory のパフォーマンストレーニングメソッドを学ぶ事ができます。
ご興味のある方は以下のリンクより詳細をご確認ください。
>>Best Performance Academy
https://bestperformanceacademy.jp/

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