今回は、先日開催した無料ウェビナーの内容の一部をご紹介いたします。
本ウェビナーでは、AZCARE社が主宰する「Contextual Strength Training(CST)」の全体像とトレーニング例をご紹介いただきました。
■テーマ:Contextual Strength Training
■開催日:2025年2月22日
■講師:九鬼 靖太 (大阪経済大学 人間科学部 准教授)
1.CST(Contextual Strength Training)とは
CSTとは、競技パフォーマンス向上を目的とした文脈的ストレングストレーニングであり、以下の3つの要素を統合したアプローチを指します。
1.特異的な負荷の提供 - 筋力トレーニングや競技動作の反復だけでは得られない負荷を与える。
2.運動学習の理論活用 - 競技動作のコアとなるアトラクターを学習し深化するための学習機会を提供する。
3.競技動作への転移 - 実際の競技場面で発揮される動作を意識したトレーニングを構築する。以上の内容を網羅的に学習するために、DMC(動的運動制御)、MLT(運動学習理論)、SSM(競技特異的動作)の3コースを認定しています。
2.筋トレや競技動作の反復だけで競技パフォーマンスが上がらない理由
「基礎的筋力トレーニング」と「競技動作の反復」の間にあるもの
一般的に、アスリートのトレーニングは「基礎的な筋力トレーニング」と「競技動作の反復」の2つに分けられます。
しかし、それらを行っても必ずしも競技パフォーマンスが向上するとは限りません。
CSTでは、この2つの間にある「特異的な負荷」と「学習機会」を考慮し、競技パフォーマンスへの転移を重視します。
特異的な負荷とは?
CSTにおける「特異的な負荷」は以下の3つの要素に分類されます。
1.筋腱複合体の長さ調整 - 筋の長さと張力の関係を適切に保ち、最大限の力発揮を可能にする。
2.力発揮のスピード - 競技特有の素早い動作に対応できる力発揮能力を養う。
3.骨盤のコントロール - 競技中の骨盤の適切な動作制御を学び、無駄なエネルギーロスを防ぐ。
学習の機会とは?
選手が競技において求められる動作を効率的に習得し、適応するためのプロセスです。 コーチングや運動心理学的アプローチを活用しながら、以下の3つの観点から提供されます。
1.運動のアトラクター - 競技に適した安定した動作パターンを形成する。
2.効率的な学習 - 環境や課題を操作し、選手自身が適切な動作を見つける。
3.適切なフィードバック - 外部環境に意識を向けるエクスターナルフォーカスを重視する。
3. CSTが網羅する3つの領域
動的運動制御(Dynamic Motor Control)
骨盤制御や筋の長さ-張力関係、マッスルスラック(筋収縮開始までの遅延)など、力学的・生理学的視点で身体の動きを最適化します。
運動学習理論(Motor Learning Theory)
運動学習の観点から、選手がより効率的に新しい動作を習得できるようなトレーニングを設計します。
特に、外部フォーカス(External Focus)や制約主導型アプローチ(Constraints-Led Approa ch)などの手法を活用することで、より自然な学習が促されます。
競技特異的動作(Sports Specific Mechanics)
競技ごとに異なる「理想的な動作パターン(アトラクター)」を理解し、それに適応するためのトレーニングを行います。
例えば、アジリティ動作における「水平面上の起こし回転」や、「膝関節の安定性」など、競技ごとに求められるスキルにフォーカスしたアプローチを実施します。
4. ヒップロックを理解し、肉離れ予防へのアプローチを変える
ヒップロックとは?
ヒップロックとは、骨盤の前額面での適切な制御を指します。
特に、支持脚側の中殿筋と体幹の筋群(腹斜筋・腰方形筋)が協調して働くことで、効率的な動作が可能になります。
ヒップロックが肉離れ予防に与える影響
ハムストリングスの肉離れリスクは、骨盤の過度な傾きや不安定性が影響することが近年の研究で示されています。
ヒップロックが適切に機能すると、ハムストリングスの筋長変化を適切にコントロールできることや不要な負荷が軽減され、急激なストレッチによる損傷を防げるといったメリットがあります。
実際のトレーニングでは、「膝よりも高く足を持ち上げる」などの課題を設定し、自然な形でヒップロックを誘発させる手法が有効です。
今回はCSTの理論と実践的なアプローチをご紹介いただきました。
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