日頃よりパフォームベタージャパンをご愛顧いただきましてありがとうございます。 10月7日(土)〜9日(祝月)に開催したPERFORM BETTER JAPAN SUMMIT 2023 の一部をご紹介させていただきます。 本日は二日目の講義の模様を一部ご紹介させていただきます。
テーマ:Neural Performance -感覚運動科学の観点からフィジカルトレーニングを再考する
講師:近藤 拓人さん (AZCARE ACADEMY 代表、NEXPORT 代表)
日米のスポーツチーム、クリニック、フィットネス施設での経験を生かし、現在はAZCARE ACADEMY代表、パーソナルトレーニング施設NEXPORT代表として現場指導と教育活動に従事されている近藤さんには、専門の感覚運動科学の観点から「フィジカルトレーニングを再考する」をテーマにお話しいただきました。
*以下、講義一部抜粋
■実行機能を鍛えることでパフォーマンスを向上できる
実行機能は認識、判断、行動の三つのフェーズで構成されています。
スポーツ競技でいえば、サッカーやバスケットボールのディフェンスのように相手の動きに対応する動作や、野球の打撃やバレーボールのレシーブのように素早く反応・判断をして意図した動作を正確に行う動作も実行機能が密接に関連しています。
実行機能が低いと判断が遅れてしまったり反応ができないといったプレーに繋がってしまいます。
実行機能を鍛えることで競技や日常生活におけるパフォーマンスも向上します。
■実行機能の訓練方法
実行機能の訓練を自分の身体を思い通りに動かせないまま行うと危険が伴います。
そのため、使いづらい部位があればコントロールできるように鍛えてから次のステップに進まなければなりません。
STEP 1 「安定した環境下で判断をして行動を起こす」
訓練例:アンチ・サッケード(眼球運動・シグナルの対側を視る)
STEP 2:「認識・判断をしながら実際に身体を動かす」
訓練例:フラッシュライト(赤色は右手、青色は左手で触るなどタスクレベルを設定すると良い)
STEP 3 「自分も動いて、なおかつ対象物も動く環境化で認識・判断し身体を動かす(キャッチボール)」
訓練例:ヘコスティック(赤色は右手、青色は左手、緑色は両手で掴むなどタスクレベルを設定すると良い)
STEP 4 「対象物も動く環境化で認識・判断し対人操作も行う(ディフェンスの動き)」
訓練例:台の上に乗って押し合い、落下しないようにコントロールする
テーマ:プロ野球における自己進化型の組織運営について(講義)/組織変革後のハイパフォーマンスチームの現場での取り組み
講師:四角 純哉さん (横浜DeNAベイスターズ チーフS&C )
2012年に横浜DeNAベイスターズ入団しS&Cとしてチームを支えている四角さんには「プロ野球における自己進化型の組織運営」をテーマにお話しいただきました。 *以下、講義内容を一部抜粋
これまでの組織構造は上層部が意思決定権を持つトップダウン型で、決定事項が「上層部>本部長>部長>グループ>メンバー」の順に上から伝達されていたものの、近年DeNAベイスターズではメンバー各々に権限を与える「自己進化型」へと変わっています。
■自己進化型組織構造とは
上層部>本部長>部長>グループ>メンバー
条件設定を行い意思決定をメンバーに委譲する。同時に育成のサポートも行う。
メンバー>グループ>部長>本部長>上層部
上長から条件付きで意思決定・権限を与えられる。 意思決定や権限を行使する代わりに説明責任や実施したことに対する結果責任も伴う。
トップダウン型の組織構造の頃は何か行うためには上司へのお伺いが必要でしたが、自己進化型へ移行してからは自責のコミュニケーションを行う機会が増え、また各々に納得解を探す柔軟性も身につくようになりました。
成長や創発により個々が進化し、その成長が組織の進化へと繋がっています。
テーマ:基礎から積み上げるS&Cアプローチ
講師:佐々部 孝紀さん (国立スポーツ科学センター非常勤トレーニング指導員/アルバルク東京U18 S&Cコーチ)
バスケットボールチームのS&Cコーチから高校の講師も務めるなど、多岐に渡ってご活躍されている佐々部さんには「基礎から積み上げるS&Cアプローチ」をテーマにお話しいただきました。
*以下、講義内容を一部抜粋
■成長の判断基準の違い
トレーニングや測定の結果から判断する場合は重量の増加や跳躍高・距離の向上、速度の向上など数値で判断できることが多いです。
対して競技中やトレーニング中に判断する場合は、動作の実施可否や選手の感覚の変化もしくは自身(指導者)から見た動きの変化から判断しなければなりません。
■成長を「主観」だけで判断しないよう注意が必要
1.トレーニングをしたから(させたから)「成長していて欲しい」という願望やバイアスが入ってしまう
自信がない、引き出しが少ない指導者は無理やり伸びているところを探してしまう傾向があるのに対して、自信を持ち分析力のある指導者の場合には、成長を客観的に検証し伸びなかった原因を分析します。
2.感覚が良くなったからパフォーマンスが上がるとは限らない
例えば野球選手がバットを振った際に軽く感じたりスイングが速く感じた場合でも客観的に分析するとスイングの速度は低下していたり、時間が経つと元の速度止まりになっているケースがあります。
そのため成長を判断する際は客観的な判断・測定が必要です。
テーマ:パフォーマンスの向上と外傷・障害予防を目指した個別化・最適化戦略 ~ 栄養・採血・遺伝子・疲労度・GPSデータをどう評価し現場に落とし込むか ~
講師:斎田 良知さん (順天堂大学 医学部 特任教授 / いわきFCチームドクター)
いわきFCのチームドクターとしてスポーツの現場でもご活躍されている齋田先生には「パフォーマンスの向上と外傷・障害予防を目指した個別化・最適化戦略」をテーマにお話しいただきました。
*以下、講義内容を一部抜粋
■スポーツドクターに求められること
知識、経験、情熱、協調性、診察技法、診断、治療、予防など
■いわきFCでの準備における取り組み
1.メディカルチェック
病気のチェックやJリーグへの選手登録のためにメディカルチェックを行います。 チェックの結果はプレーする前(怪我をする前)の状態を記録として残す意味や選手本人が自分を知る目的でも使用されています。
2.定期採血
目標値を設定し定期採血も年に4回実施しています。 病的状態のスクリーニングのために行なっていますが、結果によって栄養指導の参考値に使用したり、サプリメント使用の検討材料にもなっています。
3.遺伝子検査
パフォーマンス向上や傷害予防を目的に遺伝子検査も実施しています。 今までは全員が同じメニューで練習していましたが、これからは遺伝子情報別に設定していくことで効率良く、最適化を図ることができます。
■入念な準備が功を奏した事例
ある選手が2月に行われた練習試合で右膝十字靭帯を断裂。 翌日再建手術、術後に再生因子注入療法を3回受けた後、9月の公式戦に出場を果たした。
運動をする人や膝をよく使う人は、膝を安定させるため早めに手術を行ったほうが良いとされています。
いわきFCでは超急性期再建(48時間以内)も考慮した準備がされていたため、怪我をした翌日に手術を実施することができおよそ半年後の公式戦出場に間に合わせることができました。
この他にも疫学調査、GPS測定、疲労度チェック、対組成チェックなど幅広い取り組みを実施しています。
テーマ:エクササイズとマニュアルアプローチの統合・肩甲帯編
講師:杉山 幹さん (スギヤマカンラボ株式会社 代表)
パーソナルトレーナー活動の他、トレーニング記事の翻訳や通訳、教育事業として国内を拠点に年間100〜150本の講師活動も行っている杉山さんには「エクササイズとマニュアルアプローチの統合」として肩甲帯をテーマにお話しいただきました。 *以下、講義内容を一部抜粋
■手技アプローチの狙い
結合組織の機能不全を手技によるアプローチで可動域を改善し、患者本人に制限のない動きを認知させること
■肩甲帯コンディショニングのポイント
胸郭の可動性:回旋や伸展
肩甲骨制御:内転と後傾
肩甲上腕関節:不安定性の改善
■肩甲帯の動作評価
目的:胸郭の可動性とそれに連動する肩甲骨可動性
側臥位や立位でのローテーションを実施し胸郭の回旋や肩甲骨の関節可動域を評価する
■肩甲帯エクササイズ
3ヶ月うつ伏せ
目的:肩甲帯の安定と脊柱制御
利点:肩甲帯の評価と背面筋群の緊張評価
適応例:肩甲帯不安定からくる障害の予防&リハビリテーション
テーマ:スポーツチームにおけるS&Cコーチの役割 ~業務の実際と求められる能力とは~
講師:弘田 雄士さん (東京ガス野球部ストレングスアドバイザー)
コンディショニングコーチとして、アスリート・スポーツのトレーニング指導中心に20年を越すキャリアをもつ弘田さんには「スポーツチームにおけるS&Cコーチの役割」をテーマにお話しいただきました。
*以下、講義内容を一部抜粋
これまで数多くのチームに在籍した経験を持つ弘田さんが考えるS&C部門の主たる業務をご紹介します。
1.シーズンを通したストレングストレーニングやフィットネスプログラムの立案と実施
・主にジムで実施するストレングストレーニング、フィールドで行うフィットネスメニュー・サーキットメニューの作成と指導
・チームの最大公約数を把握し「チームのあるべき姿」に対して、技術練習との兼ね合いも考慮した、包括的でストーリー性のあるプログラムを作成・指導していくこと
・必要なフィジカルテストやコンディショニングテストを吟味し選択し実施する
2.ウォーミングアップ/クールダウンに作成と指導
・チームの最大公約数を改善するために考えた、ストレングストレーニングやフィットネストレーニングと関連を持たせた要素を抽出
・プログレッションさせつつ長期的に継続していく
3.リハビリ選手の強化メニュー作成と指導
・メディカルトレーナーのアスレティックリハビリテーションプログラムと繋がるように、密にコミュニケーションをとりながら作成
4.パートナーストレッチの実行
・トレーナーや治療家のトリートメントのケアとは違う目的
・ウォーミングアップやクールダウンの補完手段としてグラウンドでも実施できるもの
・その日の個々の選手の状態把握にも利用できる
5.睡眠や栄養、リカバリーなどコンディショニング全般の教育・指導
・管理栄養士やメンタルカウンセラーは非常勤ながら存在するチームが多い
・基本的なコンディショニング全般の知識に関する教育はS&C(水分補給、プロテインやサプリメント摂取含む栄養管理、リカバリーとしての睡眠)
6.GPSやRPEなどを通した選手の体調管理
・選手の主観的な疲労度を知り、客観的数値のデータ蓄積によって、可能な限り制度の高いコンディショニング把握に努めていく
今回は講義の内容を一部抜粋してご用意させていただきました。 パフォームベタージャパンは年に1回開催しているサミット以外にも現地セミナーやウェビナーを開催しております。 ご興味のある方は次回以降、ご参加いただけますと幸いです。 *セミナー情報は決まり次第、本メルマガやオンラインショップ、SNS等で告知させていただきます。
もっと詳しく知りたい方へ
セミナーの内容についてより深く学びたい方は講師が開催しているセミナーやアカデミーをご受講ください。
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