今回は10月7日(土)〜9日(祝月)に開催した「PERFORM BETTER JAPAN SUMMIT 2023」の内容の一部を全3回に分けてご紹介させていただきます。
1回目はトレーナーを志す大学生・専門学生を対象に実施した、前日カンファレンス「PERFORM BETTER JAPAN SUMMIT 2023 for Students」についての内容です。
各分野でご活躍されている講師をお招きしてトレーナーとしての知識やキャリア、ヘルスケアに関わるサービスの提供などさまざまなテーマでお話しいただきました。
テーマ:コンディショニングの可能性について
講師:荒井 秀幸さん (株式会社R-body Chief Technical Officer/ General Manager)
オリンピックアスリートを中心に1,000名以上のトップアスリートのコンディショニングを担当してきたR-body。「ホンモノを身近に」として一般の方のライフパフォーマンスを上げるためさまざまなサービスを提供しています。 中でも東京オリンピック・パラリンピックコンディショニングサポートコアメンバーとしての経験をお持ちの荒井さんには、北海道上川郡東川町での実例をもとに「コンディショニングの可能性」についてお話しいただきました。
北海道上川郡東川町での取り組み
1. コンディショニングコーチの派遣・常駐 コンディショニングコーチが町に常駐し、日々のコンディショニング啓蒙活動や環境整備を実施
2. 住民向けコンディショニング指導 シリーズ形式のグループセッション、少年団・中学校・高等学校・高齢者施設での運動指導、住民向け広報誌での掲載、健康意識を高める特別講演などを通して、地域住民への肩こりや腰痛などのカラダの不調改善、スポーツのパフォーマンス向上に向けたコンディショニング指導を実施
3. 身体・健康・運動に関わる情報に触れる環境づくり 町の中心に位置する図書館機能を備えた複合交流施設「せんとぴゅあ」内に、身体・健康・運動に関する書籍を選定したコーナーを設置。本を入り口とした興味の喚起や、意識づけにつながる環境を整備
4. コンディショニングエリアの機器の選定及びレイアウト変更 町民が気軽にコンディショニングを実践できる場を提供するために、機器の選定や使いやすいようにレイアウト変更を実施
上記のような取り組みを通じて、東川町では「アスリート以外にもコンディショニングは必要」という考え方が徐々に浸透してきています。
R-bodyが掲げる「チーム、企業、行政と連携し全ての人のライフパフォーマンス向上に貢献できるコンディショニング」という思想をさらに広めるには、「指導力を有する人材」が不可欠です。 近年、「ボディメイク」や「ダイエット」などのイメージが強いトレーナーですが、R-bodyの目指すライフパフォーマンス向上の思想は学生にトレーナーとして活動する上で視野が広がるメッセージとなりました。
テーマ:好きなことで生きていくために大切なこと - 次世代のトレーナーに求められる新しいコンディショニングの在り方 -
講師:桂 良太郎さん (株式会社 Best Performance Laboratory 代表取締役)
「トップアスリートの間でしか享受されていない最先端のトレーニングやリハビリ、ボディケアなどのフィジカルサービスを、全ての方々が手軽に受けられるような”Laboratory(研究所)”を作りたい。」との思いからBest Performance Laboratoryを設立された桂さんには「好きなことで生きていくために大切なこと」をテーマにお話いただきました。
冒頭から想いのこもったムービーで始まり、リハビリ、トレーニング、競技パフォーマンス(日常生活のパフォーマンス)の向上など広い範囲で活躍できるトレーナーの在り方や、具体例を交えたテクニカルなお話もしていただきました。 また、運動中に起きている代償動作を映像を使ったクイズ形式で出題し、解答時には考えられるケースを惜しみなく解説していただきました。
「一流の人達は仕事とプライベートの境目がない」
「好きなこと、やりたいことを実行するなら苦手なこと、やりたくないと思うこともやらなければならない」
「クライアントを指導するならまずは自分が体現できるように」
施設の増床リニューアルやオンライン学習コンテンツの配信を控えるなど、常に挑戦を続ける桂さんの熱いメッセージはこれからトレーナーを目指す学生にとって貴重な時間となりました。
テーマ:スポーツチームにおけるアスレティックトレーナーの役割とそこで求められる人材
講師:尾垣 孝博さん (学校法人滋慶学園東京スポーツ・レクリエーション専門学校アスレティックトレーナー専任教員)
サッカー日本代表のトレーナーとしてW杯の帯同やJリーグのトップチーム、育成年代のトレーナーなどサッカーの現場を中心にキャリアを重ねてきた尾垣さんには、スポーツチームにおけるアスレティックトレーナーの役割と求められる人材についてご紹介いただきました。
アスレティックトレーナーとは「スポーツをする人を安全、安心を確保した上で、パフォーマンスの回復や向上を支援する指導者である」 冒頭でアスレティックトレーナーの仕事内容や基礎理論など説明があり、現場で求められる仕事について具体的にお話をしていただきました。 「実際の現場ではアスレティックトレーナーの能力・知識はもちろんですが、チーム内でドクターと連携しながら選手のサポート、監督やコーチ、S&Cや医療従事者、その他チームに関わる全てのスタッフと協力しながらチームを運営していく必要があります。 そのため、トレーナーとしての能力や知識以外にもチーム内での連携を強化するためのコミニュケーションがとれないといけません。」
自身が専門学校の教員であることもあり、アスレティックトレーナーの就職事情やW杯帯同で起きた実例を挙げ、現場で活躍するトレーナーの生の声を学生に届けていただきました。
テーマ:総合型フィットネスクラブにおけるトレーナーとしてのキャリアの可能性
講師:熊田 昌俊さん (株式会社ルネサンス マーケティングデザイン部 フィットネス商品開発チーム 課長)
今回の前日カンファレンスでは唯一、総合型フィットネスクラブからルネサンスの熊田さんにご登壇いただき、総合型フィットネスクラブにおけるトレーナーとしてのキャリアの可能性をご紹介いただきました。
「大手フィットネスクラブのルネサンスでは社員、業務委託に関わらず一人のパーソナルトレーナーとしてデビューしてからさまざまなキャリアを積むことができます。 専門学校や大学を卒業後、トレーナーを志望して入社する人もいれば、店舗スタッフとしてアルバイト形態で働き社員に昇格される方、社員から独立し業務委託契約を交わす方など入社経緯も働き方もさまざまです。 さらには現場のトレーナーとして専門知識を磨き活躍する人や、熊田さんのように数千人のトレーナーのサービスの質やコンテンツの管理をする人、本社でトレーナーとは別の業務に関わる人など大手フィットネスクラブならではのキャリア形成を歩むことができます」
進路を悩まれている学生にとってフィットネスクラブのキャリア形成はさまざまな選択肢を考えてもらう良い機会となりました。
テーマ:メディカル・フィットネス・スポーツ全領域で活躍するトレーナーに求められる知識と技術
講師:近藤 拓人さん (AZCARE ACADEMY代表、nexport株式会社代表)
トレーナーとしての全ての領域を学べるアカデミーAZCARE ACADEMY、トレーニング、ピラティス、デイサービスを提供する施設NEXPORTの代表を務める近藤さんにはトレーナーとしてのキャリアプランの考え方をご紹介いただきました。
NEXPORTで活躍するトレーナーが介護からフィットネス愛好家の身体づくり、アスリートのトレーニングまで実際に現場で求められていること、日常的に「何を」「どうやって」学んでいるのか具体的な事例も交えたお話でした。
「2割の努力で8割の成果が上がる。残り2割の成果を出すには残りの8割の努力が必要」
「教育の投資リターンは年齢が若い時の方がリターンは大きいし、知識・経験は若くして持っていた方がリターンは大きい」
「1個やりたいことがあったら3個やりたくないこともやらないといけない」
トレーナーはなぜ学び続けなければならないのか?活躍する社会人(=やりがいのある仕事に就ける、収入を増やせる)になるために必要なことなど、トレーナーとして必要とされる知識だけではない前提のお話は学生が残りの学生生活を過ごす上でも、貴重な講義になりました。
質疑応答の時間では各回多数の質問が講師のもとへ寄せられ、講師の皆様にも1つ1つ丁寧にご回答いただきました。 学生を対象とした前日カンファレンスは今回が初めてでしたが、これからトレーナーを志す学生にとってプラスになっていましたら幸いです。
株式会社パフォームベタージャパン