今回はジムの開業、リニューアルで多くの方が迷われる「施設内のレイアウト」についてです。
さまざまな書籍でレイアウトを決める手順やポイントが紹介されていますが、本コラムでは、当社のお客様から過去に相談いただいた内容や、伺った失敗談などをもとに「失敗しにくい」レイアウトの考え方をご紹介いたします。
1. 施設のコンセプトを決める
レイアウトに限らず、設備や器具について考えるうえで何より重要なのはその施設のコンセプト(利用者とトレーニング目的)です。コンセプトによって必要な器具やフリースペースの広さ、最適なレイアウトは大きく変わります。
まずはご自身の施設コンセプト「誰が、どんな目的でトレーニングをする施設なのか」を明確にしてみてください。
2. まずは「必要最小限の器具」で開業する
開業時には施設のスペースが埋まるほどの器具は導入せずに、少しスペースに余裕をもって必要最低限の器具を選定することをおすすめいたします。
必要不可欠ではない器具の導入で判断に迷ったときは「あったら便利そうなものは、最初は買わない」と考えて、器具を厳選することで、使用頻度が極端に少ない器具が生まれてしまうリスクを最小限に抑えることができます。
3. 「どこに何を置く」よりも「どこで何をする」が先
最後にレイアウトを決めていきますが、パフォームベタージャパンとしておすすめする考え方は「どこに何を置く」よりも「どこで何をする」を重要視することです。「器具のサイズや場所」を起点にレイアウトを考えてしまうと「きれいに配置できたつもりが、実際に使ってみると器具を運ぶ距離が長く不便だった」「実際のトレーニングセッションの導線に沿っていなかった」といったことがよく起こります。「施設内のどこで何をするか」をイメージして「トレーニングの場所」を起点にレイアウトを決めていきましょう。
4. 具体的なレイアウトの考え方
具体的に「北島康介トレーニング全編」動画を元にご紹介したいと思います。各ブロックごとにさまざまなエクササイズを実施していますが、使用スペースや器具に分けて考えていきます。
①RESET〜BREATHING〜MOBILITY
マット1枚ほどのフリースペースで実施しています。使用器具も置き場所に困るほどの大きな器具は使用しておらず最低限のスペースと器具で実施が可能です。
主な使用器具 (柔軟性&リカバリー)
https://www.performbetter.jp/collections/flexibility-and-recovery-training
②MOTOR CONTROL〜MOVEMENT PREPARATION〜PLYOMETRICS
MOTOR CONTORLではスペースはさほど使用していませんが、多くのツールが使用されています。このブロックをどこで実施するか想定して使用頻度の高いツールの収納スペースも近くにレイアウトすることで、セッション中に取りに行ったり、ツールを戻す時間が短縮できるので「実施する場所」から「収納する場所」を考えることがおすすめです。
MOVEMENT PREPARATION以降は一定の平面スペースが必要です。また、天井高が低い物件ではPLYOMETRICSの垂直方向の動きに適した場所を選択するなど、注意をする必要があります。
動画内では使用されていませんが、プライオボックスを導入する場合には「エクササイズの実施」「ボックスの収納」のどちらにもスペースが必要です。運ぶ手間もかかるためその点も考慮してレイアウトが組めるとよりスムーズな運営が可能です。
主な使用器具 (バランス&安定性トレーニング)
https://www.performbetter.jp/collections/balance-and-stabilization-training?page=1
③MEDICINE BALL
MEDICINE BALLでは、実施場所の近くにメディシンボールラックを設置する、もしくは①〜③のトレーニングをカバーできるようなスペースであれば全てを一括で収納できるハロスストレージラックを配置することでスムーズな動線を実現できます。
また、メディシンボールを「投げつける」トレーニングを実施したい場合はレイアウト以前に物件選び、床材・壁材の強度が重要となります。
主な使用器具 (メディシンボールトレーニング)
https://www.performbetter.jp/collections/medicine-balls-training
④STRENGTH-POWER / Total Body Power Block~Primary & Secondary Block~Rotational Block
STRENGTH-POWERではスクワットラックを使用した高重量の器具を扱います。安全のためにラック間の距離、他の利用者との距離などを十分に確保する必要があります。
そのうえで運用効率を高めるには以下のような方法が考えられます。
・ラック周りに鏡を配置
・ラック付近にパワーブロックやシングルレッグスクワットスタンドなどのスペースを確保
・フリースペースの床材を人工芝とすることでエリアを明確化
また、床材にラバーマットを使用し、クライアントのトレーニング時の負担軽減や防音、器具の破損を防止することも安全性を高める上でおすすめです。
動画を撮影しているFLUX CONDETIONINGSでは、場所に応じて施設の床材を使い分けております。ぜひ参考にしてみてください。
*具体的な安全面を考慮した器具同士の距離や同時にトレーニングする人数はNSCAさんのガイドラインなどを参考にしてみてください。
NSCAガイドライン
⑤Auxiliary Block
最後のブロックは、①〜④のトレーニングで使用したいずれかのスペースを使用していることが多いのですが、有酸素運動やロウイングなどのマシンを使用する場合には導入時にはそのスペースも考える必要があります。
トレッドミルやバイクなどは「他の器具と組み合わせて使うことがない」「トレーナーが横について使用することが少ない」「実施中に移動することがない」といった理由から、邪魔にならないスペースであればどこにレイアウトしても基本的に問題ありません。 ただし、有酸素運動のみを実施する方が多い場合には、出入り口付近への設置がおすすめです。こうすることで、他の利用者とスペースや施設内の移動通路を分離することができ、ストレス軽減につながります。
「物件選び」の重要性
ここまでご紹介した内容は「物件の制約条件」がクリアされた前提になっています。プロスポーツチームや大学などの敷地内でジムを設営するのであればある程度の融通がききますが、パーソナルジムの出店となると施設面積の問題や床、壁、天井のいずれかがトレーニングジムに適していなかったり、ビルの中であれば他のテナントとの振動・騒音問題などさまざまな障壁があると思います。
「立地」「デザイン」など集客にかかわる条件も考慮して物件を選ぶ必要があるため、「すべてが完璧な理想の物件」を見つけるのは難しいですが、ご自身のコンセプトの実現に向けて最良の物件からレイアウトを組むこともとても重要な要素です。
コンセプトを軸に「こだわるポイント」「多少は妥協するポイント」を取捨選択しながら物件を選ぶことをおすすめします。 施設の出店やリニューアルでお悩みがあればお気軽にお問い合わせください。
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